<79> 思い出の巣づくり
マインの旅立ちに際しては、多くの方にあたたかいお言葉をいただきました。私にまでお気遣いいただき、ほんとうにありがとうございます。
昨日はマインの誕生日だった。そして、明日は最初の月命日になる。このほぼ一ヶ月の時間は長かったようでもあり、短かったようでもある。
この間、私はいつ、どこから始めたのかわからないが、せっせとマインの「思い出の巣」を作っていた。
マインがいつもいた場所に合わせて木工職人さんにシェルフを注文し、自分で撮ったマインの写真を額装し、親しいアーティストさんに絵を描いてくれるように頼み、家の中のあちこちにあるマインのものを集め、置いては並べ直し、置いては並べ直しを繰り返していた。
「これはどうする?」
「それはおいといて」
「これは?」
「それはいらないわ」
私はマインとそんな会話をしていた。この作業をしていると、文字どおり、夢中になれた。夢の中。
こうしてようやく今日、最後に絵を受け取りにいって、思い出の巣ができた。いただいたお花がまだきれいだったのがありがたい。
上の段には、お花、いただいたカードやお手紙、写真、絵。小さいほうの絵は、マインがまだ子どものころ、画家の叔母に描いてもらったもの。
そして、「まちゃんといえばお散歩にごはんだよね」というところではマインと私の意見が一致して、10年以上使ったPUPPIAのハーネスとリード、それに歴代のお皿。四角い小皿は生涯使った。
下の段には、ブランケットや洋服、そして真ん中にまだ全部持っているお骨。この高さにあると、ふとんを敷けば、以前と同じ位置関係で寝られる。今でも夜中に寝息を聞く。
この写真を撮ったのは8歳の時。当時からすごく気に入っていて「その時がきたら、この写真にする」と言っていた。無邪気に語った「その時」は、10年以上たってやってきた。
マインはモデル犬としてとても優秀で、人間のモデルさん以上に長時間じっとしていられた。ただし「とっぱらい」が絶対条件で、シャッター音がすると同時に飛んできてギャラのおやつを要求した。
この写真を見ると「がんばるのよ」と言われている気がする。「がんばる」という言葉はなんとなく抵抗を感じることもあるのだけれど、マインにこの顔で言われると素直に聞ける。たぶん、マインがすごくがんばりやだったからだと思う。
私はこの写真を見ながら、マインにあれやこれや相談する。
「それはいいことだわ」
「そういうのはダメよ」
マインは以前と同じように、うだうだ言う私にカツをいれてくれる。そして力強く言う。もともと丸い手をさらにぎゅっとグーにして。
「がんばるのよ。だいじょうぶだから」
そのおかげで、それだけで、私はなんとか一日一日を生き延びる。
ねえ、まちゃん、おかあさんは今でも助けられてばかりだよ。
まちゃん、ありがとうね。
お読みいただき、ありがとうございました。
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