<22> 咳の原因 ー 歯磨きジャーキーで唾液を誤嚥?
16歳になって2ヶ月がたった頃、マインが久しぶりに調子を悪くした。
最初は咳だった。咳そのものは人間にとっても犬にとっても珍しいものではないが、マインはこれまで咳で悩まされたことはなかった。
原因は私が作ったのだと思う。発端は、毎日の歯磨きがストレスになっているらしいので、2日に1度くらいは歯磨き効果のあるガムやジャーキーで代用できないかと思ったことだ。
ネットで探してみると圧倒されるほどさまざまな商品がある。やっぱり歯磨きに悩む飼い主は多いのだ。
その中でも、素材に気をつけて、最初に買ってみたのは「日清フードJPスタイルスナック歯みがきガム」。原料は米粉と豚皮。白と緑のシマシマで、緑はクロレラの色らしい。ネットショップのレビューの評価も非常に高かった。
でも、マインはほとんど興味を示さなかった。ミニサイズを選んだのだが、それでも大きすぎて口に入らないのが面白くなかったらしい。初日こそちょっと舐めたりしていたが次の日にはもう見向きもしなかった。私が噛むふりをすると、欲しがるどころか、「じゃあ、お母さん、それどうぞ。じゃあね」と言わんばかりの顔で、あっさり背を向けられてしまった。
次に試したのは、Green Dog が扱っている「デンタル乳酸菌ジャーキーささみ」。フェカリス菌という乳酸菌が配合されている。フェカリス菌は近年、口内環境を整える効果が認められるようになり、注目されているらしい。
幅は1センチ弱、長さは10センチ弱、厚みは5ミリくらい。硬すぎないし、香りもいい。材料はささみとフェカリス菌のみ。Green Dog は安全な製品だけを扱っていて、高齢犬のことを考えた商品も多いので、(やや高いけれど)これまでも何かと買っている。
こちらは随分気に入ったようで、マインは喜んでカミカミしていた。本当は飼い主が端を持って口の中に差し入れ、右側の歯、左側の歯、と噛ませるのがいいらしいのだが、マインがそんなまどろっこしいことをさせるはずがない。こちらも最初から諦めて、丸ごと与えていた。小さくちぎると、丸呑みして喉を詰まらせるのではないかと思ったこともあった。
1本食べきるのに10分くらいかかっていただろうか。噛むと当然、唾液が出る。私はそれをいいことなのだと思っていた。唾液には殺菌作用があるのだから、と。むしろ、高齢になってきて唾液が少なくなってきていることの方が気になっていた。
しかし、何日目かのこと。マインは食べ終わる頃から咳をし始めた。それまで体調が悪かったわけではないから、「ちょっと気管にでも入ったんだろう、すぐ治る」くらいにしか考えていなかった。人間でもよくあることだ。
でも、咳はなかなかよくならなかった。寝ていても起きて、引っかかっているような咳をする。そこでふと友人の90歳近いお母様のことを思い出した。唾液の誤嚥で気管支炎になってしまったという話だった。
それではないか。「ちょっと気管にでも」と軽々しく思ったが、高齢者には大問題なのだ。 唾液と一緒に歯周病の菌が入ってしまっていたら。調べてみると誤嚥性肺炎もあるらしい。段々怖くなってくる。
結局、鍼灸をお願いしているH先生に診てもらい(肺炎ではないとのこと)、抗生物質を出してもらって、咳は10日くらいで良くなってきた。でも、その間は寝ていても呼吸数も多かった。咳は相当体力を使うはずだ。ちーもマインにしては随分濃い黄色だった。
こんなことなら多少嫌がってもこれまで通りに歯磨きをしていたらよかった。せめて食べさせ方をショップのサイトで勧められている通りにしていれば。マインに余計に苦しい思いをさせてしまった。ごめんね、まちゃん。なんだか謝ることばかりだ。
マインらしく、食欲が落ちなかったのは救いになった。この頃に始めてマインが特に気に入ったらしいのは、豚の挽肉を丸めてハンバーグのように焼いたもの。
豚肉は「腎」を強くする食材なので前から積極的に与えていたが、角切りや薄切りよりもウケが良かった。脂が全体に回っているし(肉の脂は高齢になってからはある程度容認)、柔らかいし、香ばしいのも食欲をそそるのだろう。人間の高齢者にもハンバーグ好きは多いらしい。喉の潤いを保つためにヨーグルトとマヌカハニーを混ぜたものもよく舐めさせた。
でも、そうして咳が治まってきたころ、「いつか来るかも」と恐れていたことが起こった。初めてのけいれん発作、てんかんだった。(続きます……)
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