<2> 昼夜逆転は認知症のサイン?
幸い軽度だったせいで、椎間板ヘルニアはすぐに快方に向かっていったように見えた。3日目には自分のブランケットやシーツを前足で掻き寄せて「巣作り」を始め、こちらをハラハラさせてくれた。
食欲も戻った。3日間は手から食べさせたが、4日目には自分の器で食べた。
ただ、以前と違ってきたのは、朝4時や5時に起きるようになったことだ。そして、私の顔をぺろぺろなめて、起きたことをアピールすると、キッチンの方に行く。何か食べたいのである。
最初は、4時に起きても、何か食べさせるなんてとんでもない、癖になってしまうと思っていた。無視するのが一番、放っておいたら、諦めて、また自分のベッドに戻って寝るだろう、寝るはずだ。
それでも、マインは頑固である。とにかく、しつこい。モットーがあるとしたら「念ずれば通ず」に違いない。キッチンで「フセ」をして待ち始めたら、頑として動かない。
結局、4時でも5時でも、私は根負けして、自分も起きてキッチンに向かい、マインの口におやつを一口入れ、ベッドに連れて帰って、寝かせることになった。
運動不足なのかもしれない。それまでは毎日1時間は散歩をしていて、結構走ったりもしていた。椎間板ヘルニアを発症してから、それができていないので、これまでのように、夜は疲れて熟睡という感じにはならないのだろう。そう考えると、合点がいった。
そして、椎間板ヘルニア発症から2週間がたった時、久しぶりの散歩に出てみた。想像以上に歩かなかった。もちろん、前のようにびゅんびゅん走ったりはしなくても、もう少し歩くだろうと思っていた。
ぽちょぽちょという足取りを見て、とにかく無理はさせないでおこうと、抱っこして、近所を一周して戻った。
かかりつけの医師には「無理のない程度に運動を始めてください」と言われていたが、無理のない程度がどの程度なのかがわからない。
まだ痛みがあるのか。亀並みであっても、歩かせないと、筋肉が落ちたり、関節が硬くなったりして、本当に歩けなくなるのではないか。太るのも良くない。でも、それが無理というもので、また椎間板ヘルニアが再発するのではないか。そんな不安がいつも頭の中を渦巻いていた。
散歩の後には抱きしめて、頭を撫でて、頑張ったね、頑張ったね、と褒めてやる。
それで本犬が嬉しそうにでもしてくれれば、それでいいとも思えたのだが、決して嬉しそうではなかった。
そうでなくても、喜ぶ顔を見ることが少なくなってきたような気がしていた。以前はちょっと褒めただけで得意げにしていたのではなかったか。
一方、「朝活」は続いており、それに「夜活」も加わっていた。朝起きるのが早くなっただけでなく、夜中にも起きるようになったのだ。2時から3時に一度起きる、4時から5時に一度起きる、その都度、おやつを一口が習慣になってしまっていた。
この頃、インターネットでいろいろ気になることを調べるうちに、老犬の「認知症」のサインに「昼夜の生活リズムの乱れ」「満腹中枢が正しく働かない」があることを知った。
「満腹中枢が正しく働かない」とは、人間でもよくある話で、ごはんを食べたばかりなのに「ごはんはまだかい?」と聞くといったこともその表れ方のひとつらしい。
認知症という言葉がズシリと心に響く。マインの朝活、夜活はこれなのだろうか?
15歳。
かつては、犬の1年は人間の7年と単純に計算していたようだが、最近は寿命がのび、それを反映して、小型犬の場合は、(犬の年齢-3)×4+28で人間の年齢に換算できるらしい。それによると、犬の15歳は人間の76歳。
マインがなんだか随分先に行ってしまった気がする。赤ちゃんの頃から一生懸命大きくなって、いつの頃か私に追いついて、追い越して、そのままのスピードでどんどん先に行ってしまう。
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