<38> 老犬の時間
寒くなったせいもあるのかもしれないが、最近、マインはまたトン……と老化の階段を降りた気がする。
おそらく目が一層悪くなった。散歩をしていても、縁石や段差に直前まで気がつかない。たまに走る時は、その「闇雲」感がハンパない。
他の犬と出会っても気がついていない。つっかからなくなったのはいいけれど、ああ、見えていないんだなと思う。
家のなかでは、時々じーっと佇んでいて、それでも立っているだけでも足の筋肉を使うのでいいだろうとそのまま様子を見ていたら、ふと後ろ足が崩れて、尻もちをついたりする。
何か食べたいらしい時も、キッチンではなく、正反対の、ベランダに続く窓のそばにいたりする。
そうかと思えば、私がマインのお皿を手にしゃがんでみると、ススッと寄ってきたりはするのだが。
それでも、そうやって歩いたり、走ったり、食べたり、飲んだりするのを見ていると、なんというのか、どうしてこんな不思議な愛らしい生きものがここで動いているのだろうと、たまらない気持ちになる。妖精みたいだ。
このところ、散歩の途中で年齢を聞かれると、なぜかサバを読んで「17歳」と言ってしまう。本当はまだ16歳9ヶ月なのだけれど。
すごく頑張っているマインを自慢したい気持ち半分。17歳になるんだよ、このままね、という気持ちがおそらくもう半分。
ありがたいことに特に大きな病気を抱えているわけでもないけれど、時々ふとこわくなる。
ゴーヤを片付けた後のプランターに土を足してクロッカスとムスカリの球根を植えた。もう一つ、小さな鉢があいていたので、さらにチューリップの球根を2つ買ってきた。
まちゃん、お誕生日のころ、咲くからね。まちゃんは食べられるもののほうがよかったかもしれないけど、一緒に写真撮ろうね。
マインがいびきをかいて寝ている。いびきをかくようになったのも、この一年くらい。ラジオも消して、私はただ耳を澄ませている。
お読みいただき、ありがとうございました。
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