老犬とポラロイド

いつまでも続いてほしい、でも決して長くはない、老いゆく愛犬との大切な日々。

<35> 最後の一果 ー 遅まきながらゴーヤの片付け

 今年初めてやってみたプランターのゴーヤ栽培。手持ちの長方形のプランターは40センチx 20 センチ x 20センチくらいで、一般的にゴーヤ栽培に推奨されているサイズよりは一回り小さかったが、まあ最初だしと、プランターを買い直すまでのことはせず、近所の花屋で売れ残っていた「沖縄願寿」というゴーヤの苗を100円で1株買ってきて植えた。

 結果的に言えば、頑張って立派なネットを張ったものの、葉っぱはそれほど茂らず、はっきり言えばスカスカ、いつまでもネットの方が目立つほどで、30センチにもなるサイズが特徴というその種類にしては実も小さかったけれど、15センチくらいの実が6個、その半分くらいの実が2個収穫できたので大満足だった。むしろ、30センチのゴーヤが収穫できても、私とマインでは持て余してしまう。

 収穫したてのゴーヤは間違いなく市販のものよりやわらかく、みずみずしかった。薄く切ったのをさっとゆでで、ささみやツナとマヨネーズで和えたり、キュウリやトマト、それにワカメと中華風ドレッシングで和えたりして、結構楽しんだ。苦味野菜大好き犬のマインもあえる前のを毎回がっつくように食べていた。

 9月に入ると、あちこちの家の庭やベランダからゴーヤは次第に姿を消したが、私はなんとなくそのままにしていた。葉っぱも黄色くなり始めていたが、小さいのはまだ出るし、花も毎日何個か咲いた。野菜の花は素朴で愛らしい。花の名前をよく知らない私は、好きな花を聞かれると「野菜の花」と答える。

 片付けられなかった理由はもう一つあって、それは、人工授粉もしなかったのに一つの実がなり、少しずつでも大きくなる様子を見せていたからだった。

 待っていたら、3週間くらいかかって15センチくらいになった。あまり太くはならないまま、頼りなくなったつるに負担をかけまいと思っているかのように、遠慮がちにぶら下がっている。よく見ると、どこからか巻きひげが伸びてきて、実の先端に巻きついて、懸命に引き上げている。間違いなく重みはかかっていて、その様子はつるを助けようとしているようで、なんとも健気であった。

 

f:id:bassotto:20171031132333j:plain

 

 こうなると、なかなか収穫できないが、その挙句に食べられなくなっては、かえってゴーヤに申し訳ないので、秋の土用の前に思い切って収穫した。包丁を入れた時、ややかたい気がしたのは、やはりちょっと待ちすぎたのかもしれない。最後のゴーヤ料理は定番のチャンプルー。マインは相変わらずの勢いで食べてくれた。

 f:id:bassotto:20171030221722j:plain

ゴーヤLOVE

 

 今年、マインと私は、こうしてベランダでできたのやら、父が送ってくれたのやらで、本当にゴーヤをよく食べた。来年は、プランターも大きいのを揃えてみようかと思う。ゴーヤにもいろいろ種類があるようなので、2、3種類植えて、食べ比べてみようかとも。沖縄県のアンテナショップでいい苗が買えるとも聞いた。

 ねえ、まちゃん、どう思う?

 心の中でマインに相談しながら、ふと気持ちが暗くなった。最近いつもこうだ。季節もののことになると、いきなり次回を考えるのが辛くなる。老犬の一年は人の十年にも相当するなら、と。でも、そこで私は最近、深呼吸して考え直すことを覚えた。犬は来年のことなんて考えていない。今が大事、今がすべて。だから私も、来年のことなんて、考えるのはやめよう。その時になってからでいい。

 まずは明日、何を食べようか。マインの「今」のために、とりあえず私は「明日」のことまで思いをめぐらせる。最近、ぽわんとしていることが増えてきたマインだが、やはり食べている時はうれしそうなので、何を作るかを考えるのはとても楽しい。

 

f:id:bassotto:20171030221846j:plain

あれ、なくなった……。

 うん、もうおしまいだね、ゴーヤ。おいしかったね。ゴーヤにありがとうだね。それに、ゴーヤ好きのまちゃんがいなかったら、ゴーヤを育てようなんて思わなかった。やってみたら楽しかった。まちゃん、ありがとうね。

お読みいただき、ありがとうございました。
ランキング参加しています。下のバナーをクリックしていただけるとうれしいです。

にほんブログ村 小説ブログ エッセイ・随筆へ

にほんブログ村 犬ブログ 老犬・高齢犬へ