老犬とポラロイド

いつまでも続いてほしい、でも決して長くはない、老いゆく愛犬との大切な日々。

<19> 老犬食う食う、1日6食?!

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 16歳1ヶ月のマイン。歯の調子が良くなって、身体も気持ちも調子が上がってきたのはとてもうれしいことなのだが、今度はこちらがびっくりするほど食べるようになった。とにかくしょっちゅう食べたがる。

 15歳になるまでは、ごはんは朝と夜、ほぼ12時間ごとに2回でよかった。ただ、12時間を過ぎるといきなり空腹で胃液を吐くという厳しさはあり、外出が長くなると出先でもマインのお腹の「ピコピコ」タイマーの音が聞こえる気がしたものだ。それでも12時間はもった。  

 15歳を過ぎて調子が不安定になってからは、様子を見ながら朝昼晩の3回ということが多くなった。最近は夜食も加わっていた。

 それが今は、特に夕方から夜にかけてさらに何度も食べたがるので、晩ごはんを2回、夜食も2回という具合になってしまった。ふと気づけば1日6食。「晩ごはんパート1!」は6時くらい。最終の「夜食パート2!」は12時くらい。毎晩長いパーティー状態。さすがに最後の夜食から朝までは寝てくれるのが目下は救い。

 食べているものは以前と同じ手づくりごはんのペースト。量を増やすとお腹を壊しそうなので、朝まとめて作る1日分を分けながらやっている感じである。でも、途中で足りなくなって、何かと足したりもしている。

 さらにはそれに連動するように、よく「起きている」ようになった。老犬になってから寝てばかりというのとは逆で、しょっちゅう起きてはうろうろする。

 いわゆる徘徊かと思ったのだが、同じところをくるくる回ったりすることはなく、狭いところに入っても自分で器用に出てくる(あの長い胴をドーナツのチェロキーのように曲げるのは見ていてハラハラする)。そうなると一概に痴呆とは言えないようだ。

 その間にこちらがキッチンに立とうものなら足元にピタッと張り付く。おちおちコーヒーも淹れられない。しかも張り付き方が以前のようにちょっと距離を置いてこちらを見つめるというのではなく、ややもすれば私の足に乗りそうなところでじっとする。こうなると一種の凄みすらある……。

 もっとも、食べることが大好きなマインがまったく食べず、何を出しても悲しそうに顔をそむけたころもある。食べムラがひどくて、作ったものは一切受け付けず、スーパーで買ってきた「霧島鶏プレミアムなんとか」というレトルトみたいなドッグフードなら一口舐めて喜んだころもある。それを思えば夢のようであり、どんなに「え、またなのぉ?」と思ってもうれしい悲鳴のうちではある。

 寝てばかりという時期もたしかにあって、それはやはり関節に痛みがあったりしたのだろうから、これだけうろうろできるのは身体もラクなのだろう。

 よく食べるわりに太らないのは吸収が悪い(?)老犬の特権だろうか。でも、それだけに痩せることもない。体重は子ども時代と同じ4.6キロ。10歳から15歳までの間で時々5キロを超えて、先生に注意されていたのは中年太りというやつだったのかもしれない。

 まあ、それにしても、起きる、食べる、起きる、食べる、をこれだけ一日中やられるとこちらは忙しくてたまらない。家でずっと仕事をしていると朝も夜も土日もないのだが、とにかく集中できない。いや、もっとも、集中していないせいで、朝も夜も土日もなくなっているだけなのだから、こちらの問題を直すべきなのかもしれないが。

 ただわかっているのは今の状態がずっと続くわけではないということだ。ずっと続けばいいのだが、いずれはまた食べられなくなったり、起きられなくなったりするだろう。

 それは数年先かもしれないが、数ヶ月後かもしれない。その時には今のことを「あんなに元気だったのに」と思うのだろう。老犬の調子の変わりやすさはこの一年でよくわかった気がする。きっと今はとても貴重な時間なのだ。

 あまりにもよく食べるし、よく動くので、ためしに家の中でこちらがおやつを手にして離れたところから呼ぶというのをやってみると(呼ぶといっても耳は聞こえていないようなので雰囲気で)結構ダッシュで飛んできた。そんな様子を見ると、ああ、もうつきあえるだけつきあおうと思うしかなくなる。

 本当はいつまでも困らせてほしいのだけれど。いつまでも困らせてくれるとわかっていれば「ダメ、もうさっき食べたからおしまい」と言うのだけれど。

 

 

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